パン・小麦粉に含まれる残留農薬 グリホサート の実態や危険性
除草剤・ラウンドアップや開発元・モンサント社の現況
私たちの現在の食品環境はとても豊かな状況になりましたが、その一方で食品に
含まれる添加物や残留農薬が人体へどのような影響を与えるか?にも関心が持たれ、
議論される状況にあります。
ここでは身近にある食品、パンやその原料である小麦粉に含まれる添加物や
残留農薬であるグリホサート の成分について考えて観ます。
表題に実態や危険性と書いていますが、グリホサート の実態はまだ議論の
最中ですので、実態というよりは、これまでの経緯や状況について紹介してみます。
ここ近年、国際がん研究機関(IARC)が、世界中で幅広く使用されている除草剤・
ラウンドアップに含まれるグリホサート 成分に発がん性有り、と発表したことにより、
ラウンドアップやその成分であるグリホサート を危険視する世論が見られます。
除草剤ラウンドアップの大雑把な商品歴を見てみましょう。
ラウンドアップというのは商品名です。
ラウンドアップは米国のモンサント社によって開発されました。
モンサント社は1901年創立、主に農業関連の製品を提供し、遺伝子組み換え作物や
農薬の開発、農業における革新的な技術の先駆者として業界に存在していました。
除草剤のラウンドアップは、1974年に初めて市場に導入されました。
ですので発売からもうかれこれ50年が経過したことになります。
モンサント社は多国籍企業であり、遺伝子組み換え種子の世界でラウンドアップに
耐性のある作物を開発し、種子とセットで販売することで大きく市場を獲得してきた
とされます。
そしてモンサント社は2018年、ドイツの多国籍企業、
バイエル社によって買収されました。
買収金額は630億ドル、バイエルは農薬や遺伝子組み換え作物に関連する技術を
強化するため、この買収を計画し、これにより農薬や種子などの分野でビジネスを
拡大しました。
買収後はモンサントの企業名も使用されなくなっています。
この買収は環境や健康に対する懸念があり、批判を浴びることもあったようです。
ラウンドアップ、グリホサート成分については数多くの訴訟問題を抱え、
裁判についてはバイエル社が引き継いで行なっているようです。
残留農薬 グリホサート に関する訴訟問題や外国産の小麦事情
販売から50年の歳月が経ったラウンドアップですが、発がん性や危険性が疑われる
ようになってから、利用者がモンサントやバイエルを相手に訴訟を起こし、バイエルは
総額で109億ドルもの金額を支払うことで原告側と和解に至ったことなども報じられて来ました。
金銭的に和解に至ったとはいえ、バイエル社はグリホサート の安全性に問題はない、との
見解は変えておらず、ラウンドアップの販売は全面禁止にされている訳ではありません。
安全性に問題なし、との見解のままでなぜお金を払うのか? お金を払うということは
非を認めた事になるのではないか、真っ当な裁判だったのか?とも感じますが、ともかく
和解に至りながらも、全面禁止にはならず、日本でもラウンドアップは除草剤として今現在も
普通に販売されています。
しかし、危険性有りとされ、安全性に疑いが持たれ始めてからフランスやドイツ、欧州を
中心に各国が使用禁止や規制強化に乗り出しています。オランダがすでに禁止しており、
ドイツ、イタリアなど世界33カ国が今後近年のうちに禁止することを表明しています。
ベトナムでは農業・農村開発省がこの成分を利用した農薬の使用を禁止、
輸入も禁止にしました。
確固たる指針を示したように感じます。ベトナムの同省はここ近年、グリホサート が
人体への健康や自然環境にどのような影響を与えるかを精査して来たと言われています。
かつてベトナム戦争時、自国で枯れ葉剤の影響を受けただけに、切実に感じます。
世界の多くの国が禁止や規制に舵を切る最中、日本の厚生労働省は2017年12月、
反対に規制を緩め、小麦でのグリホサート 残留基準値を5.0ppmから6倍になる30ppmへ
と緩和致しました。
再び訴訟の話に戻ります。
訴訟の一例に、米国カリフォルニア州在住の46歳男性が、グリホサートを
有効成分とする除草剤を使用し続けた結果、非ホジキンリンパ腫を発症し、末期がんを
患ったとして、モンサントを提訴。
カリフォルニア州裁判所は2018年8月、モンサントに2億8900万ドルの支払いを
命じる判決を出しました。
非ホジキンリンパ腫はリンパ組織に発生する癌の一種で、リンパ球が悪性化すること
が特徴とされ、具体的な原因は不明ながら、環境要因や遺伝的な要因が関与している
とされます。
カリフォルニア州では、州政府が2017年、グリホサートを州の「発がん性物質リスト」に
加えたのをきっかけに、公園や学校など自治体が所有する場所でのグリホサートの使用を
条例で禁止する郡や市が急増。同様の動きは、ニューヨーク州やフロリダ州、シカゴ市のある
イリノイ州など、全米に拡大しました。
特にニューヨーク州ではラウンドアップの危険性を鑑みて、
安全な農薬と宣伝することが禁止されたようです。
アメリカではプレハーベスト(収穫前の農薬散布)として、グリホサート 成分を含んだ
除草剤を小麦に直接散布するとされます。こうする事で小麦の収穫前に余分な雑草を枯らせて
小麦を乾燥させ、収穫量を安定・増量させるのだそうです。
しかしこのために、北米産の小麦からはかなりの高度でグリホサート が検出されています。
これはカナダ産の小麦も同様です。日本のパン・小麦粉からグリホサート が検出
されるのは、日本の小麦粉はほとんどが米国、カナダ、オーストラリアといった
外国産から製造されているからです。
アメリカでは除草、収穫量の安定のため、
この成分を直接小麦に散布しているようです。
しかも、日本に輸出する小麦には、輸送途中の防カビ・防虫の目的で防カビ剤を
収穫後の小麦にも噴霧します。これがポストハーベストと呼ばれる農薬散布で、日本では
収穫後の農産物に農薬を散布することは禁止されている為、収穫後に農薬を散布された
作物は日本に輸入できません。
そこで、これら農薬を散布された作物を日本国内に輸入できるようにする為、
散布されているポストハーベスト農薬を「食品の保存目的」で使用する「添加物」として
認定したのです。
そうする事により、収穫後に農薬を散布されている海外産の農作物も日本国内に
輸入できる、というわけです。
農薬と認識されている成分を添加物認定に、とはあまりに強引な裁定です。
イマザリル、プロピコナゾール、などがポストハーベストの防カビ剤(指定添加物)です。
米国の小麦はこの様にプレハーベスト・ポストハーベストの農薬散布が為されています。
収穫後の倉庫、輸送中の船内、など、複数回にわたって散布されるようです。
日本国内でのグリホサート 検出の実態と危険性
グリホサート を使用した除草剤・ラウンドアップの誕生や、その成分を巡っての訴訟事情
などを観て来ましたが、日本国内でのグリホサート 検出の実態はどうなっているのでしょうか。
日本国内を流通している小麦粉は、約80%が外国産小麦(アメリカ・カナダ・オーストラリア)
から製造されています。
そこでこの3国の小麦の成分を検査した結果は、2018年度、アメリカ産の小麦からは
98%、カナダ産は100%、オーストラリア産は45.5%の確率でグリホサート が
検出されています。
オーストラリア産は2017年度まで比較的検出率は低かったようですが、
2018年になってから検出率が高くなり、これは豪州がプレハーベスト処理を
行うようになったからと思われます。
ちなみにフランスの小麦からの検出率は0%になっています。
上記の3国から輸入し、日本国内で製造された小麦粉を使用した食品からは非常に
高い確率でグリホサート が検出されています。
食品の成分表記に「小麦粉(国内製造)」と表記があるのは国産小麦ということではありません。
外国産小麦を国内で小麦粉に生成した、という事です。
元は外国産小麦ですから、例えば国内のパンなどはやはりグリホサート の残留が観られます。
日本国内の80%以上が外国産小麦による小麦粉ですから、パンに限らず、日本で小麦粉を
使用した食品は精査すればこの成分 が検出されると思われます。
2019年、農民連食品分析センターの新聞によると、学校給食のパンを精査したところ、
外国産小麦(前述の3国)を使用したパンからはほぼグリホサート が検出され、国産小麦を
使用したパンからは検出せず、との結果が報告されています。
将来ある子供たちの給食に、危険性ありとされる成分が含まれているのは憂慮する事態です。
アメリカのカリフォルニア大学の研究グループや日本の千葉大学の研究グループが出生前・
妊娠中にグリホサート を摂取した場合、子供の自閉症スペクトラム障害の発生と関連している
可能性を指摘しています。
外国産小麦に含まれる残留農薬の危険性や実態について考えて観ました。
現代の小麦は、かつての小麦に比べて大幅に品種改良がなされ、
成分がかなり変化していると言われます。
身近な食材である小麦粉の危険性を、私たち消費者側もしっかりと確認する必要を感じます。