備蓄米はどこにあるか 保管場所や保管期間は?
食料自給率が低い事が問題視され始め、加えて去年から米不足、
米の値段の高騰化などが起きました。
新米が追加されれば価格の高騰は沈静化するだろう、と楽観的なコメントも出されていましたが、
現時点では価格は値上がりしたまま下がってはいません。
そこで、備蓄米の放出など、備蓄米について言及されていますので、備蓄米とは一体何か、
どこに保管されているのか、などについて考察してみます。
日本における備蓄米とは、食糧安全保障の観点から設けられた制度で、もちろん凶作期を無事に
乗り切るためと、国内の米の生産と流通を安定させる役割も担っているとされます。
備蓄米の経緯は、まず全国の米農家の方々が通常の米の生産を行い、出来上がったお米が農協や
指定の集荷業者によって流通・集荷され、農林水産省が入札を実施し、落札されたお米が政府備蓄米と
して買い上げられ、指定の倉庫に保管されます。保管期間は概ね5年間、一定年数が経過した備蓄米は
古い順から市場放出や援助用に活用されます。
備蓄米の放出先としては生活困窮者向けの支援、学校給食や国際支援(WFP)などがあります。
そのほかにも家畜用の飼料としての活用もあるようです。
政府備蓄米はリスク分散のためもあり、全国各地の政府指定倉庫に保管されているようです。
各都道府県ごとにいくつかの保管拠点、倉庫があるようですが、具体的な場所は公表されていない
場合が多いようですが、いくつかの保管場所をみてみます。
備蓄米はどこにあるのか その保管場所
岡山県の場合 ・株式会社山陽倉庫(岡山市南区)
・岡山県米穀株式会社(倉敷市)
福島県の場合 ・福島食糧株式会社(郡山市)
・全農福島ライスセンター(須賀川市)
愛媛県の場合 ・愛媛県農協倉庫(松山市)
・四国米穀株式会社(西条市)
備蓄米はどこにあるかというと、上記以外にも全国各地に分散して保管されています。
また、政府が特定の企業や農協と契約を結び、備蓄米の管理・保管を委託しているケースも多いようです。
備蓄米の特徴としては夏場でも15℃以下をキープできるように温度管理され、
精米前の玄米の状態で保管されているため、味は落ちにくく、美味しさを保っているとされます。
適正な備蓄量は約100万トンとされていますが、近年は約91万トンで推移していると言われています。
米不足がニュースになり始めたのは昨年の5月以降ですが、実際の現場である米穀店、
スーパーなど店頭では昨年の始め頃から「米がない」と、不足感が懸念され始めていたと言われ、
それに対し政府は「ひっ迫していない」との姿勢で備蓄米の放出を決定していませんでした。
流通業者がどこかで米をストックしている、備蓄米の放出により、流通業者がストックしている米を
市場に流せば米の価格、値段は暴落する、などと様々な言説が出されています。
先日、政府の備蓄米放出が報道され、今後の米の価格、値段が例年並みの値段へと
落ち着くのか推移が注視されていますが、実態はどうなっているのでしょうか。先日、米国の
ホワイトハウス報道官が日本のコメ関税を批判する発言が報道されました。
日本が米国産のお米に約700%もの関税を課して米国に不利な貿易を行っているとの発言です。
そこで、日本でも流通しているアメリカ・カリフォルニア産のお米であるカルローズについて考えてみます
アメリカ原産のカリフォルニア米・カルローズ の関税の実態

国内でコメ不足と高騰化が問題視されているところへ、アメリカから日本政府のお米に
関する関税が非難されていますが、日本において外国産米の実態はどうなっているのでしょうか。
まず、日本にはミニマムアクセス米(MA米)と称されるお米が外国から輸入されており、
これは世界貿易機関(WTO)の貿易協定(ウルグアイ・ラウンド)に基づき、日本が最低限輸入を
義務付けられているお米のことです。1995年のWTO発足に伴い、日本は米市場を部分的に解放する
ことになり、一定量のお米を関税なしに輸入する義務が生じました。
MA米の輸入量は年間77万トンと決められています。
それぞれの用途として大まかには業務用、加工用米に約30~40万トン、これは牛丼チェーン、
回転すしなどの外食産業用、加工食品用としてせんべいや米菓子に、そして政府の備蓄米としても
約30万トン、ほかには発展途上国などへの援助や飼料用米として活用されています。
MA米は国産米の価格維持のためにほぼ全てが政府の管理下に置かれるため、一般の市場に
流通することはほとんどないとされています。主な輸入国はアメリカが約50%、タイが約20%、
豪州約10%、他にはベトナムや中国から入って来ています。
このMA米以外の外国産米を輸入するには自主輸入米となって関税がかかることになります。
先日、日本のお米に関する関税を非難する声明を出したアメリカですが、そのアメリカから
MA米として日本へ輸入されている例えばカリフォルニア米・カルローズ は無税で輸入されて
いると思われます。
このカリフォルニア米・カルローズ は通常は業務用(外食産業用や給食用)として
流通しているようで、一般にはあまり馴染みがないかと思いますが、現在国内の米不足や米の
価格高騰化の中、メディアで報道されているので注目されているかと思います。
値段が上がっている国産米に比べると若干値段が安めで比較的購入しやすいとの報道が見られます。
これは推測での記述になりますが、今現在市場のスーパーや食料品店で販売されている
カリフォルニア米・カルローズ は、MA米として輸入された物が市場に放出されているの
ではないでしょうか。
その場合は課せられている関税はおそらく無税が実態のはずです。
MA米の入札では図にあるマークアップ(政府が受け取る売買差益の部分)にて最高値を
提示した業者がMA米を落札・入手し、そこから市場に流通させていく形態になっていると思います。
MA米は入札を行なっても毎年売れ残りが常態化していたようですが、去年からの米不足の
影響か2024年度は完売に至っています。そしてマークアップ箇所の値段も15~23年度は
43~87円程度であった数値が去年2024年度は240円、11月、12月の入札では市場初めて
上限の292円に到達しています。
292円になっても通常の関税率である1kgあたり341円の税率に比べると安値で、
それゆえ今現在市場で販売されているカリフォルニア米・カルローズ がMA米経路の場合、
原価はかなり安価なはずです。
このお米は輸送費などを含めても仕入れ値が1キロ150円程度で、これに通常の関税を
上乗せしても1キロ約500円ほどで、利益分を乗せても採算が見込めることから、ある
スーパーが5キロ3335円(税込)で販売を開始したことが報道されていました。
売れ行き次第ではさらに販路を拡大する予定だそうです。
先日アメリカが非難した日本のお米の関税率ですが、約700%以上というアメリカの
主張は誤りなはずです。約700%以上の関税率は存在するようですが、アメリカからの
輸入米にこの関税率は適用されておらず、日本の林官房長官が答弁されたように、MA米と
しては無税、それ以外の輸入米には1kgあたり341円の関税率が適用されているはずです。
MA米、カリフォルニア米・カルローズ について考察しました。
消費者が様々な商品を選択の自由で選べることはありがたい環境ですが、
同時に私たち日本人が今現在置かれている食糧事情はよく把握しておきたいところです。
現在、日本の食料自給率は40%に至らない状態になっています。
アメリカのトランプ大統領が貿易において関税をかける、と公表し諸外国も反発して
関税発言が出され、関税合戦のような様相を帯びて来ています。関税は自国の国産品を
保護するためという要素が大きいはずですが、前述してきたお米に関して日本では関税を
課してもアメリカからのカリフォルニア米が国産品よりも比較的安値である状態から、
民間輸入にてアメリカ産のお米を輸入する業者が今後増えてくることが予測されます。
そして消費者も値段の安さを歓迎して外国産の米の消費に向かうと、日本の農家は
さらなる苦境に直面し、離農、日本の食料自給率がさらに低迷することが懸念されます。
今は廃止されていますが日本では1971年から2017年まで減反政策が取られ
米の生産を抑える方針が取られていました。これは戦後、日本人の食生活が大きく変化し
小麦を使ったパン食や肉食をするようになったため、米の消費が後退したことが要因かと
思いますが、この小麦を使用した食品が日本の食卓に取り入れられる様になったのは成り行きや
偶然ではなく、アメリカの明確な食料戦略と誘導があった事が鈴木宣弘教授のご解説から伺えます。
鈴木教授は東京大学や九州大学、コーネル大学などの名門大学で教鞭をとって来た経歴をお持ちの
農業経済学者として知られ、過去には農林水産省官僚として諸外国と貿易交渉を行うなどの
実務経験もお有りで、日本の食が抱えるリアルな実態と問題を解説できる方として注目されています。
氏のご解説では日本の食糧危機は間近ではなくもう始まっている
関税を課しても国産のお米より安い値段で購入できるアメリカ産のお米、米不足が
深刻化して来た中でアメリカから出された日本の関税への非難、こうしたことは偶然に
タイミングが合致したわけではなく、明確にその様な状態を意図している思惑がある様にも
感じます。政府備蓄米の放出も備蓄米と判別できない状態にて販売を行う様に、などと
不明瞭な点も感じられる。日本人の主食であるお米にも外国産が流入を始めた、商品の選択肢が
多々あるのは結構な事ですが、私たちの食糧事情が深刻な危機にあることも
しっかり認識しておきたいところです。