食品添加物と安心な食品の選び方

食品の安全性について考えるサイトです





パンの製造過程で使用される臭素酸カリウム


現在、日本国内で製造されているパンのほとんどが外国産小麦から製粉されている
小麦粉で仕上げられていることについては、当サイトの他ページでも紹介しました。


ここでは、パンの製造工程で使用される臭素酸カリウムについて考えてみます。


まず、臭素酸カリウムは1953年に食品添加物として認定され、かつてはパンの品質向上の
為との理由で使用されており、現在は「加工助剤」「小麦粉処理剤」に該当し、完成商品である
パンにその成分が残らない、残存しても極めて微量である、との条件で使用が認められています。


しかし、危険性(発がん性)が疑われる、との事から、それ以来パン製造会社の間で使用を
自粛する動きが見られ、さらに、FAO(国際食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)の合同食品
添加物専門家委員会から、「臭素酸カリウムの小麦粉処理剤としての使用は容認できない」という
結論が下され、それ以来、世界的にもパンへの添加物としての使用は控えられています。


英国が1990年、臭素酸カリウムが完成食品に残存しないと言う検証結果が得られない、
との理由から、パンへの使用を禁止、そこからEU加盟国のほとんどが、そして中国でも
小麦粉処理剤として小麦粉に使用することを禁止しました。


明確に小麦粉への使用を禁止している国が多い中、アメリカなどは全面禁止には
なっておらず、規制数値範囲内、ラベルへ表示する、などの要件でOKの様です。


米国では、パンの中に残留する臭素酸カリウムの許容安全レベルを
20ppb以下と定めています。


危険視され、禁止に至る理由はやはり発がん性によるのでしょうが、臭素酸カリウムは
「遺伝毒性発がん性物質」であるとする結果が出されています。


遺伝毒性は、物質が遺伝子に変異を引き起こし、その変異が子孫に受け継がれる
可能性がある性質を指します。発がん性物質はがんを引き起こす可能性のある物質です。
これらの評価は一般的に動物実験や細胞試験などを通じて行われ、その結果に基づいて
危険性が判断されます。


この成分がもたらす人体への悪影響として、ラットに投与した実験ではありますが、
腎臓に腫瘍を、腹膜にガンを起こす発がん性が判明しています。


このように危険視される成分ですが、2020年3月から、国内メーカーのヤマザキパンが、
パンの製造過程で臭素酸カリウムを添加物(加工助剤)として再び使用し始めました。


過去には2003年にも再開されていましたが、臭素酸カリウムの調達困難などの
事情から使用をストップしていました。


この添加物は、パンに使用することによって出来上がりの食感や膨らみが向上するとされます。


代替え方法としてビタミンCを加えるやり方も試されていますが、
出来上がり具合は臭素酸カリウムを添加した方が良い様です。
発がん性が疑われる成分だけに、ヤマザキパンの再開には消費者の注視が集まったと思います。


そして使用再開後、食品添加物に造詣のある方が、「ヤマザキパンの製品にカビが
生えないのは臭素酸カリウムを使用しているため」との本を出版したため議論を呼び、
より注視されたと言えるでしょう。

科学的見地からの臭素酸カリウムの人体への発がん性・危険性は


最近は私たちが口にする食品の多くに添加物が含まれており、それらを危険視する傾向が
強くあるよう感じますが、医学・科学の見地からはどのように捉えられているのでしょうか。


このページの主題である臭素酸カリウムについて、冒頭ではこの成分が発がん性有り、危険と
みなされている見解を紹介しましたので、それとは異なる見解もここで紹介して見ます。


前述の『ヤマザキパンの製品はカビが生えない』、との本が出版され、臭素酸カリウムが防カビ
効果を担っているとの意見に対し、ある科学大学の教授の方が見解を出され、書籍の内容は科学的
見地からはかなり稚拙な実験方法になっているとして、その内容を批判されています。


教授は、そもそも臭素酸カリウムは防カビの目的で添加されているわけではなく、小麦粉改良剤
として製品に添加されているという事、そしてパンがカビないのは、ヤマザキパンの製造過程が
極めて清潔な状態で行われている点を挙げておられます。


ヤマザキパンではAIBという米国パン研究所の国際検査統合基準による指導監査システムを導入
されていて、この方法は異物や有害生物の混入を避ける技術として非常に優れているそうです。


包装の際にも清潔さが保たれているのでしょう。


工場内、製造過程、現場の製造者さん達の衛生管理意識の高さ、などがパンをカビさせない
大きな要因の一つであるとされます。


そして、「パンがカビないのは臭素酸カリウムの使用による訳ではないだろう」と指摘されます。


この成分がカビ防止にどのぐらい役立っているかは今後の検証によるでしょうが、消費者にとって
気になる人体への影響、発がん性に関してはどうか、という点に教授は、
「0.5ppb(パン1kgあたり0.0000005g)数値以下での人体への影響は限りなくゼロであろう」
と示されています。


毒性学からは、毒は基本概念として量に依存するとされ、私たちの身近にある調味料も、
量を誤ると毒として作用します。 私たちが嫌う発がん性物質も、量的にある濃度以下で
あれば、全くその前兆的反応すら見せないそうです。


教授は、ここ最近の「無添加こそ安全」との考えに疑問を抱かれている様です。


0.5ppbというわずかな残量、すでに分解され成分が残存していないであろうとされる
パンを危険視するよりも、カビないパンはむしろ安全である、との見解も示されます。


臭素酸カリウムを使用したヤマザキパンの製品には、この成分を使用したとの表記は
されていません。完成したパン商品には、製造過程の焼成中に成分が分解され、残存して
いないとの結果からです。しかし、現在の検証技術では0.5ppbまでが限界で、それ以下の数値は
残存していても検知できないので、完全消滅しているかは分からず、残存の可能性はあります。


ただ、ヤマザキパンは臭素酸カリウムを使用した商品は自社サイトで告知されています。


臭素酸カリウム 不使用を取り決めた日本パン工業会


使用を再々開されたヤマザキパンですが、その理由を
「さらなる品質改善と美味しさの向上のため」と公表されています。


一方で、臭素酸カリウム 不使用を宣言されているメーカーもあります。


(社)日本パン工業会はこの成分の不使用を取り決め、例えば神戸屋さんなどは自社サイトで
臭素酸カリウム不使用、イーストフード・乳化剤無添加の食パン製造を謳っています。


微量なので問題無し、と判断するか、まだ完全には危険性が明らかになっていないこの成分を
含んだパンを避けるか、これは消費者側が選択肢の自由で決めることです。


無添加こそ安全、は却って危険ではないか、との教授のご指摘もあり、これは
食品添加物=危険といった最近の風潮(私はそう感じています)には一種の警鐘とも思えます。


というのも、無添加にこだわるあまりに、食品の最低限の安全性・保存性をおろそかにし、
食中毒を発生させかねない危険な事態も起きてしまうからです。


あるイベント会場で、添加物不使用・使用砂糖量ハーフ を謳ったマフィンが
販売されましたが、保存性をおろそかにした所為か、商品が傷んでいる様子が見られ、
販売品を回収するという事態が起こりました。


無添加なのでお子様にも安心、という宣伝だったようですが、免疫の未熟な幼児には
深刻な事態を招いた可能性もあるでしょう。


食品添加物は私達の現在の食品環境に大いに貢献した成分でもあります。


メリット・デメリットがあり、メリットはやはり私たち消費者にとって安い、簡単、便利、
デメリットとしては私たちの健康を損なっている可能性があるということです。


添加物を嫌うあまりに無添加を謳い、保存性・安全性を疎かにするのは問題ですが、
かといってデメリットの可能性が高い、安全性の曖昧な添加物を使用する事も感心しません。


ここで取り上げている臭素酸カリウムは科学的に完全に解明されているわけではありません。


遺伝毒性発がん性物質の危険性あり、との結果が出ています。
そのため、世界で多くの国が不使用を決定していますが、国際的に全面禁止ではありません。


日本国内のパン製造メーカーも、ヤマザキさんのように使用を再開されたメーカーもあれば
神戸屋さんのように不使用を明言されているメーカーもある、遺伝毒性が判明するにはまだ
時を待たねばはっきりした検証はできない様に思えます。

安全面の確証が得られるまでは控えた方が良いのでは、と思える添加物です。



パンに添加される臭素酸カリウムの危険性について述べてきました。

微量では問題無い、カビないパンはむしろ安全だ、との指摘もありました。

米国などはこの成分に関しては日本よりもかなり緩い数値設定がなされています。

そして外国産小麦にはプレハーベスト・農薬問題が注視されています。

日本国内のパンはそのほとんどが外国産小麦から製造されており、
これらは残留農薬であるグリホサート問題を抱えています。
これからも小麦の安全性には注視していく必要があるでしょう。




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