お米やお茶に散布される農薬ネオニコチノイドの危険性
小麦に残留している農薬グリホサート の問題を他のページで記述しましたので、
ここではお米やお茶に散布される農薬ネオニコチノイドの人体への影響や危険性、
日本での規制や残留についての現状や状況を記述してみます。
日本において一番使用量の多い農薬が有機リン系農薬で、それについで2番目にネオニコチノイド系
農薬の使用量が多いとされています。この二つはともに神経毒性農薬とされ、これは発達途上の脳に
形態学的変化を起こし、新生児期から成熟期にかけて複合暴露されると自発性行動の障害、学習や
記憶能力に障害を起こすとされます。
農薬の散布は規制がなされてはいますが、私たちは日々の食事からこうした残留農薬を
摂取し続けている可能性が高く、その場合はこの反復的曝露が問題とされています。
ネオニコチノイド系農薬の特徴として、浸透性、残効性、神経毒性が判明しています。
浸透性は、根、茎、葉、果実に浸透し、これは洗っても落ちない。
残効性は、持続性が高いのか、一旦散布されるとその後の使用が少なく済むため、
ネオニコ系が多用される理由の一つとされます。神経毒性は、これは昆虫の脳に主要な
神経伝達物質アセチルコリンの受容体に結合し、神経伝達スイッチをオンにして興奮状態が
続き死に至らせます。人間においては、成長過程にある子供の脳への発達に良くない影響が
ある事が疑われています。
そしてこれはメディアでも結構話題にされていましたので広く知られているかと思いますが、
ネオニコチノイドの農薬がミツバチの大量失踪の原因になっているのでは、と疑われていました。
この蜂群崩壊症候群は世界の至る所で見られるようになりました。ミツバチは農作物の受粉に
大きな役割を担っており、ミツバチの大量失踪は作物の収穫に大きなダメージを与えることに
なります。
この問題はネイチャー、サイエンスなどの著名な科学雑誌にも取り上げられ、
ミツバチの大量失踪は農薬のネオニコチノイドが主な原因である、と結論付けられています。
このためか、ミツバチを守るため、2018年EUではネオニコチノイド系の農薬3種の
屋外使用禁止、米国カリフォルニア州ではネオニコチノイド系の農薬の新規登録を認めない
決定がなされています。
他の各国ではネオニコ系農薬はどのような規制がなされているか、大雑把に見てみますと、
スイスでは2013年、ネオニコ系の農薬の一時使用禁止、フランスは2018年9月から
全てのネオニコ農薬禁止、イギリスは2017年、ネオニコ系農薬の包括的禁止、米国は2015年
ネオニコ系3農薬の禁止、カナダも2017年に規制強化を発表、台湾でも果実のライチとリュウガン
への使用を2年間禁止、韓国もEUに準拠して3農薬を禁止、ブラジルでも2015年に使用禁止や
規制強化を決定しています。
上記のように、世界各国がネオニコ系農薬の規制を強化しているのに反し、日本ではこれら
ネオニコ系農薬の規制緩和の方針をとっており、これは私たちにとって身近な食材である小麦粉に
含まれる残留農薬のグリホサート 成分の規制が緩和されたのと同じで、消費者がよく認識しておく
べきだと思います。
私たち国民の健康をないがしろにする方針とも言えます。
私たちに馴染みのある野菜、果物において、世界各国の定める規制と日本の規制の違いを
見ると、例えばイチゴやブロッコリーではEUと比べて数倍の違い、中には数百倍もの規制の緩さが
見られる品もあります。イチゴなどは日本のものは高品質とされていますが、残留農薬が多いため、
台湾などは日本のイチゴの輸入を拒否しています。
ほか、茶葉においても基準の緩さが際立っています。北海道大学などの研究チームに
よれば日本茶の39検体全てからジノテフランを含む7種類のネオニコチノイド系農薬が
検出された事がわかっています。
ネオニコ系農薬のチアメトキサム、チアクロプリドは、食品安全委員会により発がん性あり
との評価が出されています。日本の消費者にとっては不快な話ですが、輸出用のお茶は残留農薬が
ゼロという報道がありました。日本茶の輸出に重点を置いた政府が、輸出用茶葉には使用する農薬の
限定を農家に指導するようになった結果であろう、自国民無視の指針である、と食品の裏側を書いた
安部司氏がご自身の著書の中でも記述されています。
検査規格規定 玄米の厳しい等級着色選定
農薬ネオニコチノイドには各国が厳しい検査規格規定を定め始めた事を記述しました。
世界の潮流に反して日本での農薬の規制は緩められている事がわかります。
私たちがよく飲む日本茶にはネオニコ系残留農薬が含まれている事は前述しました。
では私たちの主食であるお米についてはどうなのか、観てみましょう。
日本のお米は、やはりその多くにネオニコチノイド系農薬が使用されています。これは、一つには
カメムシの斑点米対策としてネオニコ系農薬が散布され、そのために残留農薬として検出されるようです。
もう少し詳しくは、カメムシ防除で最も多く使用される農薬はジノテフランという農薬成分で、玄米には
一番多く残留している結果が出ています。農民連食品分析センターが2020年に行った市販玄米297検体
の検査では、約4割のお米から農薬の検出が認められ、そのうちの6割がネオニコ系、その中でも約8割が
ジノテフランが占めていたとの結果です。
斑点米とは、稲の籾に実が入り、まだその実が柔らかい時期にカメムシがその汁を
吸うことにより、後が黒い斑点になって残ります。これが斑点米ですが、この斑点米は食べても無毒、
収穫量にも影響無しだそうです。
カメムシの斑点米対策に農家の方々は相当な気を配るようですが、それはお米には厳しい検査規格規定、
等級着色選定と呼ばれる検査があり、この検査規格規定のため農家の方々は一等米を目指して斑点米の
除去に気を配られているはずです。
千粒に一つの着色粒があれば一等米、2~3粒あれば二等米と、等級が下がれば買取価格は
下がります。等級着色選定には色だけでなく、以下の選定基準もあります。
1、整粒割合(形が整っているかの割合)
2、被害粒(着色粒・胴割れ米などの割合)
3、水分含有率(14%~15%が適正とされる)
4、異物の混入率(異種の穀物や小石など)
等級 | 整粒割合 | 被害粒割合 | 備考 |
1等米 | 70%以上 | 15%以下 | 高品質で市場価値が高い |
2等米 | 60~70% | 15~30% | 若干の被害粒あり |
3等米 | 45~60% | 30~50% | かなりの被害粒がある |
規格外 | 45%未満 | 50%以上 | 市場流通が難しい |
等級ごとの買取価格
お米の買取価格は、地域・品種・市場の需給状況によって異なりますが、1等米を基準として他の等級の価格が決まるのが一般的です。
2024年の買取価格(参考)
(※実際の価格はJAや商社の買取価格により変動します。)
等級 買取価格(円/60kg) 一等米比
一等米 13000~16000円 100%
2等米 12000~14500円 約90%~95%
3等米 10000~12500円 約75%~85%
規格外 8000円以下 60%以下
上記が等級の選別基準や買取価格ですが、規格外となりますと値段も落ち、
市場に流通するのも難しく、家畜の飼料に利用されたりするようです。
等級を上げるため、色彩選別機にてあらかじめ収穫したお米の着色選定を行うのですが、
色彩選別機の値段は小型機の場合で約100~300万円、大型機になると500万円以上になるため、
小規模農家の場合にはJAや流通業者に色彩選別を依頼しているケースもあるようです。JAや流通業者に
依頼されている場合、地域差もありますが一般的には1俵(60kg)あたり200~500円程度に
なるようです。
農家の方々が検査規格規定のため、収穫したお米の着色具合に気を配るのはこうした事情によると
思いますが、前述のようにカメムシによる斑点米は食べても無害です。あらかじめほぼ斑点米は除去され
ているので、購入したお米に含まれていたとしてもごくわずかな量と言えるでしょう。販売されているお米
にはこの等級の表示もされていません。カメムシによる黒斑紋は人体への悪影響も心配する必要はありませんが、
等級着色選定の基準が厳しい点は、これは農薬企業のための規定ではないのか、とも思えてしまいます。
というのも、2020年7月に検査規格規定の見直しが行われましたが、米の等級選定見直しは
されていません。「等級着色選定を緩和すれば農薬使用量が減ってしまうから」との理由が議事録に
残っていたそうです。
農薬を極力使用させたい、との思惑でしょうか。
農家は検査を受けないでお米を自由に販売はできるようなのですが、農家の方々がこうした
検査を通す事情として、検査を受けていない場合は、小売の際、産年、産地、品種の表示ができず、
しかも「未検査米」との表示が義務付けられているそうです。未検査米、との表示が記載されていれば
それだけでも消費者は購入を躊躇する方が多いと予測されます。その一方で、業務用米は検査を受けて
いなくとも産年などの3点表示が可能なようです。また、輸入米は等級無し、着色選定は国内基準に
比べて10倍も緩い基準になっている様です。
農薬をお米に散布する時期は登熟期(8~9)月が中心で2回程度の散布が標準的とされています。
お米の他に野菜や果物の農薬散布回数を見てみると、トマト68回、キュウリ50回、イチゴ52回。
これは熊本県での慣行栽培のガイドラインに記載されている散布回数だそうです。
農協から農家に、いつ、どの農薬を撒くかなどが書かれたマニュアルが配られ、それに則って
散布されるようで、これには農薬製造企業と農協の強い繋がりを感じてしまいます。
これほどの回数が散布されているかと思うと野菜や果物の購入をためらってしまうでしょう。
日本はかなりの農薬使用大国となっているのですがこれは、日本の風土が温暖多雨で病害虫を
発生させやすい風土である事、ビニールハウス栽培など農地集約型農業で生産性を向上させなければ
ならない、消費者がきれいな形の野菜を求める、といった理由が挙げられていますが、ほかにも
前述の農協の存在が理由として指摘されています。
農協がタネ、肥料、農薬をセットにして販売し、農薬を使うように指導している様なのです。
さらに、農協の上位団体である全農(全国農業協同組合連合会)や農薬メーカーが
農林族議員を献金で支援し、農水官僚は関連団体に天下るといった構造が出来上がっている
様です。
こうして既得権益を維持しようとする形態が見られ、多数の農家は農薬使用過多から
なかなか抜け出せない現状が指摘されています。
農協改革が行われ、有機農業を支援している協同組合も出始めていますがまだ
広く行われていません。
世界各国を見ても有機食品の取り入れを示し始めている国は多く、
日本もこうした動きが広まって欲しいところです。
農薬過多の事情に農協の形態を紹介しましたが、消費者側からはどうでしょうか。
これには、消費者も農薬過多に加担してしまっている様に思える点があります。
それは、日本において消費者はあまりに食材の形や見た目にこだわりすぎる事です。
ある農家の方は、形が不揃いの野菜は商品にならないとコメントされている事から、
形や大きさが規格にそぐわない作物は、おそらく業者に購入されないのだと思います。消費者が
購入してくれないから、敬遠するから、というので業者は神経質にまで形、大きさの均一性を求める、
農家の方々はそれに応えるため農薬過多に傾く、といった構図もあるかと思います。
しかし、形や大きさが多少歪、規格外であっても味に問題はありません。私も長く有機栽培の野菜、
果物を購入してきましたが、有機栽培で仕上がった作物は総じて味が濃厚なのです。
しかも残留農薬の心配がない。形や大きさが均一だけれども残留農薬の心配が懸念されるならば、
多少は不揃いでも有機栽培の野菜や果物を選択したい、と考えますが如何でしょうか。
ただ、現状では食品コーナーを見ても有機栽培野菜や果物はまだあまり整備されていない、
消費者が食品の添加物や農薬にもっと関心を持ち、認識を変えていく事が求められています。
なぜなら、世界が危険視して規制を強めている農薬が、日本においては逆に規制が
緩められている事態が展開しているからです。他ページで紹介した小麦に含まれるグリホサートや
前述してきたお米に含まれるネオニコチノイドといった農薬です。
残留農薬の人体への影響や危険性
ネオニコチノイド系農薬は、世界の最も広い範囲で使用されている農薬といわれます。
ニコチンに似た成分のニコチノイドが基本で、水に溶けやすい特性のため植物が根から吸収して
茎から葉へと隅々まで浸透してゆき、害虫がその葉を食べると死んでしまうという経過です。
1990年代から世界での使用が急増した農薬です。これと関連してミツバチの大量失踪も
注視されました。この関連については種種論争があった様ですが、ネオニコ農薬が原因で
あるとして決着がついています。
ネオニコ系農薬は洗っても落ちないため、その成分を浴びた農産物が食事を通して人体へ
入り、発達障害を起こす危険性や子供の脳との関係・影響を指摘する研究が報告されています。
日本ではここ近年約10年間でネオニコ系農薬の使用量が3倍になっていることがわかっています。
これと関連してか、小中学児童調査で子供たちの発達障害が増加傾向にあることも判明、
2019年6月、7月には大学・医師らの研究グループがネオニコ代謝産物(DMAP)が、胎児に
高確率で移動する可能性を示唆した世界初の報告を発表しています。DMAPは一般日本人集団から
最も頻繁に検出されているネオニコ代謝産物で、記憶喪失や指の震えといった症状を起こす患者から
しばしば検出される事が知られています。
北海道大学の池中良徳教授や平久美子氏ら研究グループもこうしたネオニコ系の残留農薬に
関する研究結果の発表を行い、日本人は胎児期から農薬の曝露を受けている事、ネオニコ系農薬
は胎盤関門を通過して母体から胎児へ移行する事、その摂取源は飲食物である可能性が高いこと
などが公表されています。
こうした医師や大学の研究機関が公表している結果や児童たちの統計から考えると、
ネオニコ残留農薬の人体への影響が無害であるとは思えません。EUや他の国々がこうした
安全性に疑問の残る農薬を規制し、徐々にではありますが有機農法をとりいれる方針へ向かって
いる事は健全だと思えます。
日本はネオニコチノイドもグリホサート も世界の潮流に反して規制を緩めてしまいました。
農薬だけでなく、今後はゲノム編集食品なども台頭してくる事が予測されます。
これらの食品の現時点での規制は非常に緩く、安全性については心許ない状況です。
安全性が確認されていない食品は普段から意識しておきましょう。