アメリカ産日本品種のお米 違いやその特徴
アメリカで生産されている日本品種のお米について
令和の米不足で主食のお米の価格が今後どのような推移を
辿るか注視されています。
備蓄米の放出が行われ、市場に出回りましたが、一般的な銘柄米の値段が
落ち着くかどうかはまだわかりません。
令和の米不足の前には平成の米不足、1993年に冷夏が原因で米不足が起こり、
海外から米の輸入、市場提供を行いましたがこの時には主に長粒種のタイ米など
で対応したため、日本人に馴染みのあるジャポニカ米とは違いがある事で問題も
生じました。
ジャポニカ米の特徴とは、米粒が短く丸みを帯びています。
炊くと水分を多く含み、粘り気と強い弾力、そして甘みが出ます。
冷めても硬くなりにくく、おいしさが長持ちします。
日本で栽培されているお米のほとんどはこのジャポニカ米ですので、
「日本米」といえばジャポニカ米を指すのが一般的とされています。
ジャポニカ米は日本だけでなく、朝鮮半島、中国東北部、台湾、ベトナム、
アメリカ西海岸、オーストラリア、イタリアなどでも広く栽培、消費されています。
ジャポニカ米と対をなすのが「インディカ米」で、こちらは米粒が長いのが特徴で
炊いても粘り気が少なく、パラパラとした食感になりますので、和食のスタイルには
不向きでしょう。しかし料理によっては例えばリゾット、パエーリャ、焼き飯、カレー
などにはこちらの長粒種が好まれるかもしれません。
平成米騒動の際に対応したお米が一般的な家庭の食卓には合わなかったせいか、
備蓄の制度が見直され、1971年から始まっていた「食糧管理法」が廃止され、
1995年に「食糧法」が施行、政府が一定量の米を備蓄する「政府備蓄米制度」が
本格的にスタートしています。
今回の米不足ではアメリカ産のお米などが比較的安めな値段で出回り始めているので、
アメリカでの日本品種米は何か、どういった特徴を備えているのかを記して観ます。
アメリカでも日本品種のコシヒカリやあきたこまちといったジャポニカ米が
生産されています。
アメリカ国内の米生産地でジャポニカ米の主要な生産地はカリフォルニア州で、
9割以上がこの地で生産されています。
1、コシヒカリ
・日本でもおなじみ、人気の高い品種ですがアメリカでも
生産されており、粘りがあり、甘みがある。
・カリフォルニア州の一部の農家が栽培しており、主に日系スーパーや
高級和食店向けに供給。
日本産と比較すると若干甘みにおいてあっさりとした食味とされる特徴がある。
2、アキタコマチ
・日本の秋田県発祥の品種で程よい歯ごたえと粘りが特徴。
・カリフォルニア州で栽培され日本食レストランやアジア系市場に流通。
日本産よりやや硬めな特徴とされ、寿司や丼物向けとして人気。
3、ササニシキ
・さっぱりした特徴、寿司用として根強い人気、米菓子メーカー向けにも生産されている。
4、ヒトメボレ
・コシヒカリ系の品種で、日本の宮城県などで生産、アメリカでも栽培されており、
和食店向けに流通。
大まかには上記のような日本の品種米が、アメリカのカリフォルニア州でも
生産されています。
他の州、アーカンソー州、ルイジアナ州、ミズーリ州でも生産がなされているようです
がこちらでは主にインディカ米(長粒種)の生産が行われているようです。
アメリカ産の日本品種米は大まかには以下のブランド名で流通しています。

・ 「Calrose カルローズ」
アメリカで最も一般的なジャポニカ米の
ブランド。アメリカで開発された中粒種の
総称ともされ、日本品種をベースに改良され
粘り気はコシヒカリより控えめ。
カリフォルニア州を中心に大量生産され、
一般向けにも広く販売。
画像は「Shirakiku」。
最近は日本のイオンが商品名「かろやか」
として4kg ・ 2680円 税抜きで
店頭販売を始めています。

・ 「Kokuho Rose
(国宝ローズ)」
コシヒカリ系品種。カリフォルニアで
栽培。正確な品種のルーツは明確になっていない
部分もあるようですが、1950年代にアメリカの
コウダ・ファームズがカルローズ と中東の品種を
交配して作られたともいわれています。
北海道の銘柄米「ななつぼし」や「ふっくりんこ」の
開発にはこの「国宝ローズ」の血統が使用された
ともいわれます。

・ 「Tamaki Gold
(たまきゴールド)」
高品質なコシヒカリ系品種で日本産に近い味わい
を目指して、日本人の田牧一郎氏がカリフォルニア
の地で開発。
・ 「Akitakomachi California」:あきたこまちをカリフォルニアで
栽培。日本産より若干硬めだが寿司用として評価されている。
また、アメリカ産の日本品種米は日本産のお米と比べて
次のような特徴、違いが観られます。
まず、気候の違い、カリフォルニアの気候は乾燥しているため、日本の国産米より
粘りは控えめで少々パサつきがある。土壌の違い、日本の水田と異なり水の成分にも
違いがあるため、味や食感にわずかに違いが生じる。収穫後の管理では、日本では
低温貯蔵が徹底されるが、アメリカでは一般的な穀物保存法が多いため、風味の保持が
異なる。
そして、日照時間の違いも米の育成には影響してくるといわれます。
土壌、水質、日照時間、こうした諸要素の違いから、日本品種米は近年融合が
進んだとはいえ、本場日本と同じように育成するのは難しいようです。
アメリカ産の日本品種米と日本国産米には上記のような違いが見られますが、
カリフォルニア産のジャポニカ米も近年は日本産の食味に近づいている点は
評価されています。
前述の銘柄・品種のうち、カルローズ 米は最も代表的なカリフォルニア米として
令和の米不足の現在、日本の市場に出回り始めて報道でも取り上げられていますので、
知名度も上がっていると感じます。カルローズ は日本品種米をベースに1948年に
カリフォルニア州で開発された中粒種のお米で、粘りはやや少なくパラっとした
食感特徴のためかチャーハンやパエリア料理に利用のようです。
このお米は関税分や利益分を上乗せして価格を設定しても比較的安く、取り扱いや
販売を決定した食品店が散見され、売上次第では今後も販売を拡大するとの事が
報道されています。
アメリカ カリフォルニア産のお米 田牧米とは
アメリカ産のお米には前述のように日本品種があり、
生産地は主にカリフォルニア州のサクラメント・バレーです。
カルローズ 米が最も代表的かと思いますが、他にも前掲の「田牧米」と
呼ばれる銘柄のお米があります。
このお米は日本で15年間米作りに従事した田牧一郎氏がアメリカに渡り、
現地で米農家となり開発されたお米です。1990年代前半頃から販売が開始され、
田牧氏によると今現在ではアジアやヨーロッパ、中東地域の主要都市でも販路が
確立されています。
品種のルーツとしては日本のコシヒカリ系統に由来するとされます。
田牧ゴールド、田牧クラシックと2種類のタイプがあり、田牧氏はこのお米の開発に
あたり、「既存のアメリカ産の日本品種米との違い、特徴がはっきり出るお米を意識した」
と言われています。
このお米は実際に私もよく食べました。
美味しいお米で、見た目は日本の著名な銘柄のお米より小粒に感じるぐらいの短粒種で、
味の方はなんの違和感もなく日本産のお米と同じように美味しく食べれます。硬め、柔らか
めなどの好みはある程度水加減で調節を行えば問題無く、本当に美味しく食べれるので
アジアやヨーロッパの主要都市で扱われていることも納得できます。日本国内での市場向け
販売はされていませんが、カリフォルニア産の高級米として日本の一部レストランや業務用
市場で取り扱いがなされているようです。
アメリカ在住の日本人の方々には人気も品質も高いお米だと思います。
日本国産米 海外への輸出 今後の展望
極大雑把にですが、アメリカで生産・販売されている
日本品種のお米について記述しました。
国内が米不足の現在、アメリカ産のカルローズ 米が今後日本の市場で今以上に
販売されるようになるか気になりますが、カリフォルニアの地も水不足問題を抱えており、
この問題が深刻化すればかなり大規模でジャポニカ米の価格高騰化が懸念される不安を
抱えています。
その時に代替米として日本国産米が供給源になる可能性は低いと予測されていますが、
やはり日本のお米は生産に手間や時間といったコストが掛かりすぎているため、
価格的にカリフォルニア米に対抗できない面があるようです。
日本国産のお米が今後どのように海外展開するのかを考えると、
農政は国産米の海外輸出を増量する方針のようです。
ただ、田牧氏の手記では今後の日本国産米の海外輸出の展望は必ずしも楽観視できない
のでは、とも述懐されています。日本国産米の品質が高いのは確かなのですが、海外で
喜ばれる、強く求められているかといえばそうでもない様です。
例えばアメリカ西海岸の現地を田牧氏が視察された所では、現在円安の影響もあり
日本国産の銘柄米が現地のお米よりも比較的安値で販売されているのに、売れ行き好調の
様には感じられないといわれます。明確な指針と宣伝・広告も無いままに販売コーナーで
日本産米を並べても消費者が購入してくれるのは難しい様です。
これは前述の価格の面で対抗できないといった記述とは矛盾するようですが、
価格面だけでなく調理や料理方法と相性が合わなければ避けられてしまう面も
あるのでしょう。
日本国産米が高品質は確かでも、他国・現地にはそれぞれの食卓事情と料理方があり、
日本産米は必ずしも好相性というわけではないので、消費者は購入してくれないようです。
田牧氏の現場カリフォルニアの大農家でも日本品種米を積極的に生産しようという
気運は観られないそうです。現地では品種開発・改良の試みは頻繁に行われているので
氏の田牧米も近いうちにそれを凌駕する品種が誕生し、そちらと競争になるかと予測され
ていたそうですが、日本米の実状はそんなでもない様です。
アメリカ以外の他の国々でもお米を使った日本食(飲食店や業務用)は、
日本国産のお米はほとんど使われておらず、広く普及しているのはアメリカ産の
カリフォルニア米・ジャポニカ米のようです。
こうした事情を観てみると、日本は長く減反政策を行い国内の米不足を生じさせ、
品質の高い日本産米の海外輸出・指針を持たずに国内の食料自給率の低下や農家の
離農まで招いたと感じます。
米生産の現場も旧態依然で止まってしまっているのではないでしょうか。
日本国産米は需要や人気が無いのではなく、和食、炊飯を家庭の食卓に
取り入れてもらう宣伝や働き掛けが弱いのだと感じます。
2013年には和食がユネスコの無形文化遺産に登録されています。
こんな大きなきっかけがあり、和食は長寿・健康食としても世界で関心が持たれて
いるでしょうから、日本の農政は和食・日本産米の海外輸出プランをしっかり練り、
支援もすべきだと感じます。
日本は戦後、高度経済成長を果たして豊かになり、それに伴って食生活も多様化し
米の消費量が落ち込んだのは必然かもしれません。アメリカの小麦戦略もあったわけ
ですが、それに上手く対応しながら国産米を海外に向けて輸出し、自給率や国内農業の
強化を図るべきであったと思えてなりません。
減反は最も安易で無策な方針だったと思えます。
農政は2030年までに国産米の輸出量を35万トンに増やす方針です。
寿司を始めとする日本食が人気料理としてアメリカで定着しましたが、
和食・日本国産米はまだ市場で開拓する余地があるのではないでしょうか。
楽観視はできなくとも、各家庭に性能の良い炊飯器を備えてもらい、食卓に
和食のスタイルを取り入れてもらう域まで宣伝・アピールを行えば日本産米は
本場のお米としてさらに需要も増すのではないかと思います。
