モンサント社(現バイエル社)の除草剤 ラウンドアップ

ラウンドアップの成分 グリホサートが小麦粉に残留している

備蓄米の放出がなされてから少し時が経過し、米不足に関する報道も少し落ち着いた
印象を受けますが、私達を取り巻く食品環境は米不足だけでなく、残留農薬問題など
依然として油断してはならない状況にあると感じます。

日本人の食生活は戦後急速に変化したとされ、米が主食の生活から小麦を原料とする
パン食がもたらされてきました。そして現在日本国内に流通する小麦粉は、その大部分
が米国、カナダ、オーストラリアといった3国原産の小麦が主流になっており、この3国
原産の小麦からはかなりの高確率で残留農薬の成分としてグリホサート と呼ばれる成分が
検出されています。

この3国原産の小麦は、収穫の前にラウンドアップ と呼ばれる除草剤を
散布されています。 ラウンドアップ は米国のモンサント社が開発した除草剤で、
約50年前に商品として販売が開始されています。

主剤の成分はグリホサート 成分で、この 成分は発がん性あり、人体に危険性あり、
との事で現在世界中でその使用が危ぶまれ、使用を禁止することを表明した国、
あるいは近年中に使用を禁止にする事を決定した国々が多く出てきています。

・コロンビア:グリホサート を主成分とする製品の散布を禁止。

・スリランカ:重金属と結びつき、深刻な腎障害を引き起こすとして輸入・販売使用を禁止。

・オランダ、スイス、フランス、ドイツ:ホームセンターでの販売を禁止。

・EU、ベルギー、バミューダ諸島、バンクーバー、スウェーデン:家庭での使用を禁止。

・EU:欧州議会は2022年までに農業用の使用禁止を求める決議を採択。

・ドイツ:GM作物の栽培禁止と、2023年末までにグリホサート 禁止を決定。

・イタリア:2016年、収穫前処理使用の禁止

・インドのパンジャブ州:2019年2月、ケララ州、使用禁止。

・ベトナム:2019年3月、新規輸入の禁止。

・タイ:グリホサート とバラコートとクロルピリホスの3農薬について、
 2019年12月1日からの使用禁止を決定。

・オーストリア議会:2019年7月、グリホサート 全面禁止の法案を可決。

・ルクセンブルク:2020年2月グリホサート を含む製品の販売を禁止。

「世界各国の禁止状況は安田節子氏の著書(私たちはなにを食べているのか、
まともな食べ物がちゃんと手に入らない日本) 9ページ目より」



上記のように、世界各国が使用を禁止し始めたグリホサート 成分ですが、
日本は反対に2017年12月、厚生労働省はグリホサート の残留基準値を
大幅に緩和しています。



そして、児童たちの学校給食を調べてみると、外国産の小麦を使用したパン
からはほぼグリホサート 成分が検出され、この成分が小麦粉に残留している
ことがわかります。


モンサント社(現バイエル社) ラウンドアップの除草剤としての効果

モンサント社やラウンドアップの経緯については他のページで記述しましたが、
ここでも大まかに会社やラウンドアップの経緯について記述してみます。

モンサント社は1901年、アメリカで創立され、主に農業関連の製品を提供し
遺伝子組み換え作物や農薬の開発、農業における革新的な技術の先駆者として
業界に存在していました。ラウンドアップはモンサント社によって開発され
1974年に市場に導入されました。

そしてモンサント社は2018年ドイツの多国籍企業バイエル社によって
買収されました。

バイエル社の概要を観てみましょう。

バイエル社は1863年フリードリッヒ・バイエル氏とヨハン・フリードリヒ・
ヴェスコット氏によってドイツのヴッパータールで創業、当初は染料の製造業社と
してスタートしています。

1899年、「アスピリン」を開発・販売、これが世界的な大ヒットとなり、同社の
医薬品事業が拡大したとされます。

1900年代前半は医薬品や化学製品の開発で急成長、第一次世界大戦の最中では
化学兵器の開発にも関与したとされ、これは後に批判の対象になっています。
1925年にはバイエル社は他のドイツ化学企業と合併し「IGファルベン」という
巨大企業体の一部になっています。(戦後、IGファルベンは解体される)

戦後は1951年、バイエル社は独立起業として再建し、医薬品、化学品、農薬など
分野を多角化しながら世界市場へと進出、飛躍の切っ掛けになったアスピリンに加えて
心血管薬、抗生物質、避妊薬などを開発、1970年代以降は農薬やバイオサイエンスにも
本格参入、2000年代になると医薬、農業、科学の3つの分野を強化し、2006年には
シェリング社を買収して医薬品分野を強化、2014年には医薬・農業に特化し、2018年
に米国のバイオ農業・遺伝子組み換え技術企業の「モンサント社」を約630億ドルで
買収しています。

これにより世界でも最大の農薬・種子企業となり、以後ラウンドアップもバイエル社の
製品ラインに加わり、ラウンドアップに関する発がん性訴訟問題も大量に引き継いで今に
至っています。

米国ではラウンドアップを使用した事による体調不良を訴える人達が我も我もと現れ、
2018年から2023年には大規模訴訟と和解もありましたが、現在でも訴訟問題は
継続中の件もあり、全体で12万5千件、和解・賠償額は途方も無い1兆円に及んでいる
ともいわれます。

この除草剤の安全面での評価はまだ定まっておらず、「通常の利用法では発がん性の
リスクは観られない」といった見解から、国際がん研究機関(IARC)では、ラウンドアップ・
除草剤 を「人体においておそらく発がん性あり」と公表しています。

最近の動物実験(ラット)では発がんリスク増加の兆候が報告されており議論が
続いています。 下の画像は遺伝子組み換えとうもろこしを餌として与え、加えてラウンド
アップを混ぜた水溶液を投与した結果至ったラットの写真です。


グリホサート を成分とした除草剤は他にも種々あるかと思いますが、
ラウンドアップが最も著名な除草剤になるかと思います。禁止を表明する国々が
ある一方、日本は規制を緩めましたので、私達の身近な食品群にもグリホサート 成分は
残留しているでしょうし、ラウンドアップは現在でもホームセンターなどでごく一般的に
販売されています。

私も効果を試してみたくて、あくまで狭い一画に於いてですが自宅の敷地内で
散布して観ました。 除草剤ですから当然ですが散布された雑草は枯れます。砂利を
敷き詰めた一画にて所々芽を出している雑草に直接ラウンドアップを掛けたのですが、
雑草が枯れた後、通常は周辺一帯に雑草が茂るのですが、散布後はその周辺にまでほとんど
雑草が生えてこない状況になりましたので、かなり除草効果のあることは伺えます。

しかし世界の複数の国々でこの除草剤が問題視されるようになり、人体の健康への影響だけ
でなく、環境への影響も懸念して、ラウンドアップの流通禁止が行われている国もあります。
特に家庭用の除草剤としての使用が制限される動きも見られます。

モンサント社が内部文書にて人体への危険性を把握していた?

国際的にも危険視され、禁止、容認の二極化が進んでいるかに思えるラウンドアップ
ですが、この除草剤の人体への危険性に関して、開発元のモンサント社が社内内部文書に
おいてその危険性を把握していたのではないか、と思われる解説も出てきています。
最近の国内の米不足などで食料自給率の低下に関し危機・警鐘を出されている鈴木宣弘教授は、
ご自身の動画・解説の中でモンサント社のこうした内部事情を指摘されてもいます。

氏のご経歴を少しここで紹介してみます。
鈴木教授は近年の食料自給率の低下から、食糧危機はすでに始まっている、との事で
農薬問題、食料問題などに関しご解説や手記・書籍も出されていますのでご存知の方も
多いと思います。

1958年、三重県の半農半漁の一家ご出身で、専門は農業経済学。82年に東京大学
農学部をご卒業後、農林水産省に入省。九州大学大学院教授をお務めになった後、2006年から
東京大学教授。 「食の戦争ー米国の罠に落ちる日本」「世界で最初に飢えるのは日本」などの
ご著書が多数。

そして役人として多くの国際間の交渉、アメリカとの交渉に携わり、理不尽な交渉の
数々にも臨まれてきた実体験をお持ちです。それらの交渉、実体験からお感じになったことは、
例えばここでの話題であるラウンドアップ の人体への影響に関しても、「これはメディアも研究
機関も連動して重要な問題を隠蔽しているのではないか」と感じたことをご解説されています。

前述のようにこの除草剤の人体への危険性については評価は定まっておらず、米国環境保護庁(EPA)
は2020年2月、「適正に使用する限りグリホサート は安全」と評価、他方で国際がん研究機関
(IARC)からはグリホサート 成分を「おそらく人体において発がん性がある」との評価が出されて
います。

モンサント社や各国の規制機関、農薬企業はグリホサート 成分を単体で審査し、
安全である、と宣伝してきています。この安全性評価においては、その農薬に補助剤として
含まれる成分の毒性データを含めずに主剤の成分のみで評価を行っている様なので、正確な
評価がなされているとはいえず、誤りがある可能性もあります。
加えて農薬の調合・配剤は企業秘密とされ、これを理由に食品安全委員会での農薬審議会は
非公開になっています。調合・配剤が企業秘密である点はもちろん守られるべきですが、
全くの第三者検証が許されなければ企業側の提出するレポートを鵜呑みにした安全評価になります。

前掲した腫瘍を抱えたラットの写真は、フランス・カーン大学のセラリーニ教授による研究の
結果であり、この結果が論文として発表されましたが、この論文は正式な検証による反論論文が
無いままに 学会にて撤回措置が取られたとの事です。

セラリーニ教授の研究によると、ラウンドアップ の補助剤の一つである界面活性剤POEA
(ポリエトキシ化獣脂アミン)がグリホサート 単独に比べて毒性は千倍以上であることを示した、
という研究結果を2017年に発表しています。

商品化され販売が始まってから50年が経過したラウンドアップ ですが、人体への影響が
今現在大きな問題となって議論されているのは、食品添加物や農薬の安全性の真偽はある程度の
使用期間を経過しないと現れてこないのか、とも感じます。

日本は世界の他の国々の潮流に反して問題視されているグリホサート 成分の
許容数値を緩めました。

消費者が普段見ている食品コーナーや食品店舗は綺麗に整備・整頓され、そこからは
人体への本当の影響は感じとれません。製造、商品化の現場での成分の実態などにも
意識を向けておきたいところです。