ブロイラーとは?意味・育種の背景、出荷までの一生を解説

「ブロイラー」と聞くと、スーパーでよく見かける「若鶏モモ肉」や「国産鶏肉」を
思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、ブロイラーとは実は“品種名”ではなく、“用途に応じた
若鶏の呼称”なのです。ここでは、ブロイラーの意味や育種の仕組み、出荷までの日数、そして短い
一生の実態について詳しく見ていきましょう。

ブロイラーとは?

「ブロイラー(broiler)」とは、英語で「焼いて食べる若鶏」という意味。つまり、食肉用に
育てられた鶏の総称を指します。特定の品種名ではなく、「短期間で体重を増やし、柔らかい
肉質を得る目的で育てられる若鶏」のことをいいます。

もともとこの言葉は20世紀初頭、アメリカで大量飼育が始まった時代に生まれました。
当時はオーブンで“broil(焼く)”ことからこの名が定着し、現在では世界中で食肉鶏を意味する
一般名称になっています。

ブロイラーの意味と日本での位置づけ

日本では、ブロイラーは一般的に「国産若鶏」として販売されています。表示に「国産」と
ある場合でも、実際の遺伝的ルーツは海外にあり、アメリカやイギリスの大手育種企業が開発した
血統が使われています。

日本国内で孵化・飼育・食肉加工までを行えば「国産若鶏」と表記されますが、
血統的にはアメリカ系統の“輸入種鶏”を基にしています。

ブロイラーの育種元はどこ?

現在、世界中のブロイラーのほとんどは、たった2社の国際企業によって供給されています。

  • Aviagen社(アヴィエイジェン) … 主力系統「Ross308」
  • Cobb-Vantress社(コッブ・バントレス) … 主力系統「Cobb500」

これらの企業が保有する「原種鶏」から、祖父母鶏(GP)や親鶏(PS)が生産され、
それが各国に輸出されて国内で孵化・肥育されるという多層構造になっています。

つまり、日本のスーパーで「国産若鶏」として販売されている肉も、遺伝的にはこの2社の
血統を受け継いでいるというわけです。


ブロイラー雛は海外から直接輸入されない

ブロイラー雛そのものが海外から輸入されているわけではなく、上位世代(祖父母鶏・親鶏)が
空輸で日本に導入され、国内の孵化場でヒヨコが誕生します。こうして国内生まれのブロイラーが
全国の農場に出荷される仕組みです。輸入の主体は国内の大手種鶏会社(伊藤忠飼料、JA系統、
プリマハム系など)によって行われているようです。

輸入は主に空輸、上位世代が生体として国際貨物便で通気性のある輸送ケージに數十羽ずつ入れられ、
ライブバード・コンテナで梱包され温度・湿度管理のもと輸送、各空港へ到着すると動物検疫所での
検査を経て種鶏場へ移動します。

検疫所では約1~2週間の検疫期間、その後種鶏場(祖父母鶏飼養施設)に搬入、国内で親鳥を
育成して卵を採取、各地の孵化場で「国産ブロイラー雛」を孵化させ、農場で肥育、食鳥加工場で
加工され食肉として販売される経緯になります。

日本の場合は基本的に空輸によりますが、比較的近距離での輸送の場合
(ブラジル→アルゼンチンなど)船舶輸送によっても輸出入がなされているようです。

ブロイラーの出荷日数はどのくらい?

ブロイラーは驚くほどのスピードで成長します。
一般的に、孵化からわずか45~50日ほどで出荷されます。

これは品種改良と栄養管理の結果で、昔の在来鶏が3~4か月かけて育つのに対し、
ブロイラーは約7週間で体重2.5kg前後に達します。

この短期間育成を可能にしているのが、AviagenやCobbによる「成長効率」と
「肉付き」に特化した遺伝改良です。

ブロイラーはなぜ歩けない?

SNSなどで「ブロイラーは歩けないほど太らされている」と言われることがあります。
これは全くの誤情報ではありませんが、正確には次のような背景があります。

ブロイラーは急速に体重が増えるように改良されており、筋肉(特に胸肉・モモ肉)の
成長に骨格が追いつかないことがあります。そのため、出荷間際の個体では脚に負担がかかり、
「歩きにくい」「座りがちになる」などの状態が見られるのです。

ただし、近年では飼育密度の見直しや飼料設計の改良により、歩行異常の発生率は減少傾向に
あります。鶏が自力で立ち上がれないような状態は、動物福祉(アニマルウェルフェア)の
観点からも改善が進められています。

ブロイラーの一生

ブロイラーの一生は、非常に短く効率化されています。

成長段階日齢の目安内容
孵化0日齢国内の孵化場で誕生
初期育成1~14日保温とワクチン接種、飼料スタート
中期育成15~35日体重急増、換気・温度管理が重要
出荷前期36~49日約2.5kg前後に成長、歩行力低下が始まる
出荷約50日食鳥処理場へ搬送・解体


短期間での飼育は効率的であり、食肉産業の安定供給を支えていますが、
「命をいただく」現実を見つめ直す上でも、私たち消費者が知っておくべき仕組みです。

まとめ

  • ブロイラーとは、食肉用に育てられる若鶏の総称であり、品種名ではない。
  • 育種元はAviagen社とCobb-Vantress社の2社が世界の大半を支配。
  • 出荷日数はわずか45~50日で、驚異的な成長スピードを持つ。
  • 成長スピードの影響で歩行困難になる個体もあるが、改善努力が続く。
  • 国産表示の若鶏も、国内で孵化・肥育されているが、血統は海外由来。




ブロイラーとは何かを知ることは、私たちが毎日の食卓で口にしている鶏肉の「背景」を
理解することでもあります。命と食の関係を考え、消費者が家禽・家畜の飼育環境を把握しておく
事は安心安全な食事を摂取できる事につながります。